 オジロワシ
 オオワシ
一斉調査
冬季、知床半島には多数のオオワシが飛来する。羅臼町には町独自で天然記念物監視制度が制定されており、5人の監視員が密猟や事故などに備えていたがその数の調査はされたことが無く、未解明であった。私は昭和51年に羅臼に赴任し、文化財の係りとなったが一体、何羽のワシが何処からやって来るのだろうという疑問を持ち、監視員の方々にお願いして昭和53年より一斉調査を開始した。当初は機材もなく、子供が使うようなおもちゃの双眼鏡やオペラグラス、測量に使うトランシットまで持ち出しての調査であった。更に私は鳥、あるいはその生態などに関する知識は皆無であったので、丹頂の調査を手本とするなど、今考えれば汗顔の至りである。しかしながら昭和53年には44羽のオジロ、オオワシが確認され、少なくてもこれだけは渡来しているという数を明記できることとなった。また、オオワシの比率が高く、この調査では71%にものぼり、当初は識別ミスかとも考えたがその後の二十数回に及ぶ調査で、同程度の比率であることも判明した。確認数は回を重ねるごとに増え続け、昭和58年の第6回調査では総計2682羽を数えるに至った。この頃には知床博物館に事務局が設置され、調査も大規模なものになり、日本全国で鳥類の専門家達が同じ日に双眼鏡を手にして観察するということとなり、それに伴って様々な分析がなされるようになってきた。調査により判明した大略を記すと、
1.冬季間、日本に渡来するオオワシ・オジロワシの最大数は2500〜3000羽程度。最大は2004年の3425羽。
2.羅臼前浜ではスケソウダラの漁獲量と密接な関係を持っている。
3.オオワシに関してはその多くはサハリン、シャンタル諸島より渡ってきているが、かなりの数が棲息していると思われるカムチャッカ方面からはあまり渡来してこないようだ。これは半島の太平洋側は結氷しないためと半島南端にあるクリル湖も全面結氷はしないため、膨大な量の紅鮭あるいはその死体の捕獲が可能なためと思われる。
4.渡りの時期は10月頃からで、経路は稚内からオホーツク海沿いに南下するが、知床半島を通り越して南千島に行くものも多くあるが、厳冬期(2月中旬)になると知床あるいは道東に戻ってくるものも多い。これは河川が結氷するまでの間、自然河川が多く残っている南千島の鮭に依存しているものであろう。
等々である。いずれにしても、知床の地が彼らにとって重要な意味合いを持っていることは明確であり、世界遺産指定の報を待つ今こそ、少なくても森林やスケソ資源など、現状を維持する方策を皆で考えていかなければならない時期である、と思っている。
涌坂周一
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