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知床半島を知ろう

あるがままの自然が今も存在している「知床半島」は、「気象」「海」
「海岸」「川」「森林」「山」全てにおいての自然環境や生態系は知床
半島ならではの特徴があり、世界的に見ても貴重な宝庫です。



「知床半島の位置」
北緯 43度50分〜44度20分 (羅臼町は44度0分)
東経144度45分〜145度20分(羅臼町は144度15分)
日本最北東端に位置します。

「知床半島の面積」 1135平方kmのうち森林面積は952平方km(全体の83.9%) 羅臼町の面積は397.84平方km
「気象の特徴」 同じ知床半島でも斜里側と羅臼側では大きく異なります。夏の斜里側は 快晴が多いのに対して羅臼側は霧が多く、冬の斜里側は雪が少ないのに 対して羅臼側は雪が多く降ります。これは海に突き出している知床半島 によってさえぎられるために、、気象が変わってしまうからです。
「海の特徴」 地球上で最も低い緯度で流氷ができるオホ−ツク海.その中でも知床半 島は流氷が流れ着く南端に位置しています。そしてこの流氷は豊富な植 物性プランクトンを運んできます。それを動物性のプランクトンやエビ カニ、貝、小魚などが食べ、それを更に大きな魚が食べ、その大きな魚 を食べるためにトド、アザラシ、クジラ、ワシがやってきます。    このように、冬の知床の海が多くの生き物達で賑わうのは、長い間、流 氷によって人間が入り込むことが出来なかったため、今でも昔ながらの 自然が存在しているからなのです。
「海岸の特徴」 知床半島の断崖は流氷や海の波によって気の遠くなるような年月をかけ てつくられてきました。 その断崖には他の動物や植物たち、人をも寄せ付けない厳しさあるため 多くの鳥たちや知床半島特有の植物の繁殖場所として犯されることなく 保たれています。
「川の特徴」 知床にはゆっくりと流れる長い川はありません。川の源流部から海まで 渓流が続いているのが知床半島の川の特徴です。           川は森の木々たちに覆われていて、水温が低く養分がたっぷり含まれて いるので、魚にとっても住みやすい環境となっています。       川の大きさや数に対して多くのサケ、マスが遡上しますが、そのなかで もカラフトマスは非常に多く遡上します。川で通年生活しているのはオ ショロコマ(イワナの一種)とサクラマス(ヤマメ)などで、、コイ科 などの純粋な淡水魚がいないという特徴もあります。
「植物・森林の特徴」 知床半島の植物は、海岸から標高1600mほどの山の上まで非常に変 化にとんでいます。標高の低い場所から高山植物が見られることや、同 じ知床半島でも斜里側と羅臼側は生育する植物の種類が違うなど、半島 の面積ほどでこれだけの植物相が見られる場所は非常に珍しいといえま す。 知床半島の森林は大きく分けると3つに分かれていて山頂付近ではハイ マツ帯、中腹ではダテカンバ、下部では北方性の常緑針葉樹(トドマツ やエゾマツなど)と落葉広葉樹(ミズナラやセンノキなど)が交じり合 う特色を持つ植生態です。
「山の特徴」 知床半島は千島列島から続く火山帯の一部で、「羅臼岳」と「硫黄山」 の二つの活火山があります。特に「硫黄山」は噴火の時に溶岩以外の鉱 物(硫黄)を多量に噴出するという世界に3つしかない火山で有名です 。硫黄山は1800年代以降少なくとも4回噴火を繰り返していて、最 近の噴火は1936年で、今も活発に活動してます。
「生態系の特徴」 知床半島には北海道内に住むほとんどの哺乳類や鳥類が生息してます。 また、鳥類、魚類、海獣類が季節的に移動するコ−スになっているため 、渡りや回遊する動物たちが多く集まるという特徴があります。そのな かでも多くの大型哺乳類や鳥類が見られることは、知床が陸・海の自然 生態系が保たれている場所だということの証です。
「知床の代表的な動植物」 知床半島には天然記念物にしていされているオオワシ、オジロワシ、シ マフクロウなどや、北海道指定天然記念物として指定されているマッカ ウス洞窟に生育するヒカリゴケなどが見られます。          特にオオワシはロシアの東側にしか生息していない世界的にも貴重な鳥 です。知床半島はワシたちの越冬にとって重要な場所で日本全体で越冬 する数の46%にもなります。また、シマフクロウはダム建設や河川改 修などの開発によって、繁殖するための自然環境が減少したため、世界 でも200羽ほどしか生息していない絶滅の危機にある貴重な猛禽類で す。しかし、そのうちの100羽余りにシマフクロウが知床半島を中心 に生息しています。 ヒカリゴケの植生規模は世界の中でも最大級です。その他、国内では知 床にしか生育しないシレトコスミレのような珍しい高山植物もいくつか 見られます。これらのことは知床の海の資源や自然環境が豊かであるこ との証です。 また、知床半島はヒグマが生息する密度が世界的にも高い地域の一つで 、繁殖率も高く、一般的には2年に一回の出産が見られます。 冬の羅臼の海(根室海峡)は流氷が少なく、スケトウダラなどのエサが 豊富にあるので、多くの妊娠しているトドが胎内の子どもを育てるため にやってきます。しかし、海の環境の悪化や漁業被害などの理由による 駆除によってその数が減少しています。
「国内トップレベルの自然保護制度」 知床国立公園は全国でも最も力を入れて保護されている国立公園で、指 定区域のうちの61%が特別保護地区となっています。他にも全国に5 ヶ所しかない原生自然環境保全地域として指定されている遠音別岳周辺 や野生鳥獣を保護する国設鳥獣保護区、国有林の森林生態系保護地域な ど、国の機関(環境省・林野庁)の多くの保護制度により保護されてい ます。これは、国内の原始的自然が減少している中で、知床半島は貴重 であり、国を上げて保全していかなければならない場所だからです。
「ナショナルトラスト運動」 (しれとこ100平方メ−トル運動) 斜里町では国立公園内の原生林や自然生態系を「守り」・「育てる」た めに全国から寄付金を集めて土地の買い取りや植樹、自然教育活動など の環境保全運動を展開しています。 「資料」羅臼町・知床世界遺産登録推進協議会 国後島
知床世界遺産候補地地域連絡会議

「知床世界遺産候補地管理計画」
1.はじめに
知床自然遺産候補地(以下「候補地」という。)とその周辺は、北半球における 流氷の南限とされ、 流氷とともにもたらされる大量のプランクトンを植物連鎖の基礎として、多種多様な海生生物が生 息・生育する地域である。サケ科に代表される回遊性の魚類は、河川を遡上し、これを餌とするヒ グマやシマフクロウ、オオワシ、オジロワシといった大型哺乳類や、絶滅のおそれのある猛禽類を 育み、また 北方系と南方系の植物が混生するなど、海域と陸域の自然環境が密接に影響しあい、 豊かな生態系を形づくっている。また、火山活動により形成された急峻な知床連山、山麓を覆う原生 的な森林、切り立つ海岸断崖、多様な湿原・湖沼群など様々な 景観が凝縮され、優れた自然美を有している。 世界的にも類い希なこのような生態系や景観を有する知床を世界遺産にする推薦するに 当たり、当該候補地の自然環境を将来にわたり適正に保全管理していくために、管理計画を策定す る。

2.目的
管理計画は、候補地の保全に係わる各種制度を所管する関係行政機関(環境省、林野庁、文化庁、 北海道)及び地元自治体(羅臼町、斜里町)、並びに関係機関・団体が、相互に緊密な連携を図る ことにより、候補地を適正かつ円滑に管理することを目的とし、各種制度の運用及び各種事業の 推進等に関する基本的な方針を明らかにする。
  3.候補地の概要 (1)位置
候補地は、オホ−ツク海と根室海峡に接した北海道東端にある半島に含まれ、北緯43度58分 00秒より44度20分25秒・東経144度58分45秒より145度22分45秒に位置している。 関係する地方自治体は、北海道斜里郡斜里町・目梨郡羅臼町である。
(2)面積など
(3)総説
(4)自然環境
ア.地形・地質
知床半島はオホ−ツク海の南端に突出した、 長さ約70km、基部の幅25kmの狭長な半島で あり、西側が オホ−ツク海東側が 根室海峡となっている。半島の中央部を最高峰の羅臼岳(標高 1,661m)をはじめとする標高1,500mを超える山脈が縦走しており、一部に海成段丘が見られる ほかは稜線から海岸まで平地のほとんど見られない急峻な半島である。火山活動や海食など多様 な地形形成作用により奇岩や海食崖、火山地形などが造られ、多様な景観を生み出している。 現在も活動中の火山うち、 知床硫黄山(1,562)は1936年に溶触硫黄を8ヶ月にわたって 噴出し、国際的に注目された火山である。

イ.気候
知床半島の気候は、流氷の存在と北西季節風の影響により比較的気温が低いオホ−ツク海気候と 、海洋性気候の性格が強い千島列島の気候の接点に位置しているため、その地理的・地形的特徴 により海洋の影響を強く受けている。また知床連山の存在は半島の東西の気候に影響をおよぼし、 狭い半島の中で気温や降水量に大きな地域差を生じている。羅臼側は、 夏季,には湿気を含んだ 海からの南東風が知床連山に当たり雨が多く、海霧により 低温になる。 冬季には海洋性気候の 影響を受け、比較的降雪が多く、 気温も斜里側と比較すると高い。一方斜里側は、 夏季には 知床連山の北でフエ−ン現象が発生することにより 高湿地域になり、降水量も少ない。 冬季には流氷が接岸することにより、太陽光線の反射や海水からの熱放射遮断効果によって 気温は 低い。

ウ.植物相
知床半島には海岸から高山(1250〜1660)にいたる狭い標高範囲に山地帯・冷温帯性〜高山帯 ・寒帯性の 多様な植生が垂直的に圧縮され、その大半は現在でも原生的な状態が維持されている。 急峻な海崖にはいわゆる高山植物の群落を見ることが出来る。低標高地の森林はミズナラや イタヤカエデなどからなる冷温帯性落葉広葉樹林、トドマツやエゾマツからなる亜寒帯性常 緑針葉樹林とこれらが混成した針広混交林がモザイク的に併存する。高山植生は比較的低い 標高範囲にあるにもかかわらず多様な植物群落から構成される。また植物相も 北方系と南方系 の植物が混在して豊かであり、陸上維管束植物で800種以上、海藻で100種以上が記録さ れている。この仲には、知床半島固有種の シレトコスミレ、海藻では分布域の狭い アツバスジコンブ等を含む。陸上に生育する維管束植物相の四分の一以上を高山植物が 占めることも大きな特徴である。

エ.動物相
知床半島は、複雑な地形と海岸から高山帯まで人での加わらない様々な植生が連続しており 、豊かな海に囲まれた多様な生息環境は、多くの野生動物を原生的な状態で育んできた。 しかも温帯と寒帯の境にある知床は、北方由来と南方由来の動物相の交点にあり、多様な 動物相を現在まで維持している。哺乳類は、 陸上哺乳類34種、海生哺乳類28種確認され ており、このうち食物連鎖の頂点に位置するヒグマは世界有数の高密度状況で維持している。 鳥類は、国際的希少種であるシマフクロウ、オオワシ、オジロワシ、クマゲラなどが天然記 念物に指定されている。魚類は、淡水魚類42種、海水魚類223種が確認されており、 北方系魚類を主としながらも、オホ−ツク海で唯一暖流である宗谷海流の影響により南方系 魚類が多く見られることが特徴である。この他、爬虫類7種、両生類3種、昆虫類2,500 種以上報告されており、 知床の動物相は、その特異な生息環境により多様な種から構成され ている。

(5)社会環境
ア.歴史
厳しい自然環境による開発の難しさと、地元住民を含めた高い自然保護意識に支えられ、 知床の自然は原生的な状態を今日まで保ってきた。豊かな海や山の恵みを糧として、ヒグマ やシマフクロウ、シャチなど守り神としていたアイヌ民族の狩猟採集文化の時代は19世紀 半ばまで続いた。斜里側では明治時代から入植が数度試みられたが、自然環境・社会環境の 厳しい条件が重なり、昭和41年(1996)までに 開拓地は全て放棄された。これと前後して 、自然保護の動きが強まり、昭和39年(1964)に国立公園指定されたのを始めとして、 遠音別岳原生自然環境保全地域、知床森林生態系保護地域、国指定知床鳥獣保護区の指定など 数々の保護制度が適用された。また、昭和52年(1977)には開拓跡地を乱開発から守り しんりんに復元する目的として、地元住民と自治体が主体となった「しれとこ100平方 メ−トル運動」がスタ−トし、日本における ナショナル・トラスト運動のさきがけとして 発展した。

イ.利用状況
候補地の多くの面積を占める知床国立公園及び周辺地域では現在、年間約230万人の利用 者が訪れる。中でも、知床五胡、ホロベツ、カムイワッカ、知床峠及び羅臼温泉は利用頻度が 高く、知床五湖には年間50万人が自然探勝を目的に訪れる。利用者の利用形態は、従来から 見られる大型バスによる周遊や観光船による遊覧などの団体での観光周遊や探勝利用だけでなく 、近年は登山、トレッキング、 シ−カヤックなどの体験型利用が増加しており、質的に変化 してきているうえ、多様化が進んでいる。

ウ.一次産業
候補地の大半を占める国有林は、森林生態系保護地域に指定されており、木材生産を目的とした 森林産業は行なわれていない。また地域の主要な産業である水産業については、生産力の高い 豊かな海に支えられ、サッケ、マス、コンブなどの水産資源の持続可能な利用が図られている。

エ.土地所有形態
土地所用形態は林野庁所管の国有林が●●パ−セントを占めており、一部にその他の国有地 、北海道有地、私有地が含まれている。

4.管理の枠組み (1)基本的考え方
本地域が有する世界遺産としての価値を将来にわたって維持していくことを目標として、以下に 掲げる既存の各種制度を適正に運用し、陸域から海域にわたる候補地全体の一体的な管理を 行なう。またそれぞれの制度を所管する行政機関による緊密な連携・協力により、効果的な管理 が推進されるよう努める。
(2)地域指定制度などの概要
候補地は、「原生自然環境保全地域」、「国立公園の特別保護地区」、「特別地域及び普通地域」 、「森林生態系保護地域の保存地区及び保全利用地区」、「国指定鳥獣保護区」、 「同特別保護地区及び特別保護指定区 域」として、以下のとおり保護を図っている。

ア.原生自然環境保全地域
「原生自然環境保全地域」は、人の活動によって影響を受けることなく原生状態を保持し、 一定のまとまりを有している土地の区域で、当該区域の自然環境を保全することが特に必要な 地域について、環境大臣が「自然環境保全法」に基づき 指定及び管理する地域である。同法に 基づき昭和55年(1980)2月に知床の遠音別岳周辺が知床国立公園の区域から除外され、「 遠音別岳原生自然環境保全地域」にしていされた。この原生自然環境保全地域の全域が、 候補地に含まれている。原生自然環境保全地域においては、学術研究など特別の事由による場合 を除き工作物の新改増築や木竹の伐採などに加え、動植物の採捕、落葉落枝の採取や焚き火 など当該地域における自然環境の保全に影響をおよぼす恐れのある行為が禁止されている。

イ.国立公園
「国立公園」は、優れた自然の風景地を 保護するとともに、その 利用の増進を図り、もって 国民の保健、休養及び教化に資することを目的として、環境大臣が「自然公園法」に基づき 指定及び管理する地域である。同法に基づき昭和39年(1964)6月に「知床国立公園」 に指定された地域の全てが候補地に含まれている。公園の保護及び利用上重要なな地域であって 工作物の新築や木竹の伐採などの行為は環境大臣の許可が必要とされている。 「特別地区」、 及び公園の核心的を厳正に保護する地域であって工作物の新築や木竹の伐採などに加え、動植物の 採捕、落葉落枝の採取や焚き火などについても環境大臣の許可が必要とされ、より厳正に保護が 行なわれている 「特別保護地域」、並びに海面の埋め立てなどの行為に環境大臣への届出が 必要とされる 「普通地域」がそれぞれ国立公園の保護計画に基づき指定され、この地域区分に 応じて規制されている。また、自然を保護しつつ、その適正な利用を図るため、国立公園の 利用計画に基づき、 歩道やビジタ−センタ−などの整備が行なわれている。

ウ.森林生態系保護地域
「森林生態系保護地域」は、我が国の森林帯を代表する原生的な天然林が相当程度まとまって 存在する地域を保存することによって、森林生態系からなる自然環境の維持、動植物の保護 、遺伝資源の保存、森林施業・管理技術の発展、学術研究などに資することを目的として、 林野庁が「国有林の管理経営に関する法律」に基づき、計画的に国有林野の管理経営を行なう 中で、地域ごとの具体的な管理経営の計画策定に係わる細部事項を定めた「国有林野管理経営規定」 に沿って設定し管理する地域である。本制度に基づき平成2年(1990)4月に知床半島の中心部の 地域は 「知床森林生態系保護地域」に設定された。最も原生的状況を呈する林分であり、 森林生態系の厳正な維持を図る地区である 「保存地区」は、学術研究や非常災害時の応急処置 のための行為などを除き、原則として、 人手を加えずに自然の維持に委ねることにしている。 保存地区の森林に外部の環境変化の影響が直接及ばないよう暖衝の役割を果たす地域である 「保全利用地区」については、木材生産を目的とする森林施業は行なわず、自然条件などに 応じて、 森林の教育的利用、大規模な開発行為を伴わない森林レクレ−ションの場としての 活用を行なうものとしている。

エ.鳥獣保護域
「国定鳥獣保護区」は、鳥獣の保護及び狩猟の適正化を図ることにより生物の多様性の保護 等に寄与することを通じて自然環境の恵沢を享受できる国民生活の確保などに資することを 目的として、環境大臣が「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」に基づき指定する 地域である。同法に基づき平成13年(2001)11月に指定された鳥獣保護区及び特別保護地区 が候補地と重複している。鳥獣の捕獲及び卵の採取などが禁止されている 「鳥獣保護区」 、また、特に鳥獣の生息、繁殖の場として重要な場所は一定の開発行為が規制される 「特別保護区」が指定されているとともに、より一層の保護管理を図る区域として、 特別保護区の一部が 「特別保護指定区域」に指定されている。「特別保護指定区域」では 動植物の採捕、落葉落枝の採取に加え、犬その他鳥獣に害を加えるおそれのある動物を持ち込む ことや鳥獣の営巣に影響を及ぼす可能性のある観察及び撮影等が規制されている。

オ.天然記念物
「天然記念物は」動植物(生息地、繁殖地、渡来地及び自生地を含む)、地質鉱物 (特異な自然現象の生じている地域を含む)で我が国にとって学術上価値の高いもののうち 重要なものを保存することを目的とし、文部科学大臣が「文化財保護法」に基づき指定する ものである。候補地に生息する動物のうち、4種類の鳥類( オジロワシ、オオワシ、 シマフクロウ、クマゲラ)並びに1種の昆虫類( カラフトルリシジミ)が天然記念物に 指定されている。天然記念物の保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、文化長官の 許可が必要である。

カ.水産資源管理制度
日本における漁業については、国内の法令、都道府県規則や漁業者の自主取り組み等により 、漁業および資源の管理が実施され、水産資源の持続可能な利用が図られている。 海面の漁業は大きく分けて、 沿岸漁業、沖合漁業,遠洋漁業の3つに区分されるが、 知床における漁業は沿岸漁業であり、その主なものは サケ・マスの定置漁業、カレイ、ホッケ、 スケトウダラ等の 刺し網漁業及び コンブ漁業である。これらの漁業は、「漁業法」に基づく 「漁業権漁業」や「北海道漁業調整規則」による「知事許可漁業」である。「 定置網漁業権 (知事が漁業者等に対し手免許)」としてサケ定置漁業、「 区画漁業権(主に知事が業業 協同組合に対し免許し、漁業協同組合が管理)」としてはホタテガイ養殖業及び、コンブ養殖業 そして、「 共同漁業権(知事が漁業協同組合に対し免許し、漁業協同組合が管理)」としては コンブ、ウニ、ホタテガイ漁業、カレイの刺し網漁業などが行なわれている。このような ことから、知床の水産資源の管理においては、 漁業者と漁業協同組合の両者が重要な役割を 担っている。なお、知床の漁業協同組合としては、斜里側に斜里第一漁業協同組合・ ウトロ漁業協同組合、羅臼側に羅臼漁業協同組合がある。また、「北海道内水面漁業調整規則」 では、カニ刺し網やイカ釣り等26種の漁業を行なう際には「知事の許可が必要 (知事許可事業)」であり、「体長等による制限又は禁止」、小型のサケ・マス、ホッキガイ、 ウニ等の採捕が禁止されている。さらに、「漁法の制限又は禁止」により、水中に電気を 流したり、もじ網を使用する漁法が禁止され、「禁止区域等」により、」ホッキガイ、アサリ、 ウニ、ナマコ等の産卵期の採捕が禁止されている。また、「河口付近などにおけるサケ・マス の採捕禁止」及び「河口付近等における漁業の禁止」により、知床においては、サケ・マスが 遡上する期間、羅臼川、サシルイ川、イワウベツ川及びオンエベツ川の河口付近でのサケ・マス の採捕及びサケ・マスが採捕される漁業が禁止されている。また、「北海道内水面漁業調整規則」 では、「水産動植物の採捕の許可(知事許可)」により、刺し網、投網、やな等の10漁法を 行なう際は知事の許可が必要であり、「禁止期間」により、内水面におけるサケ・マスの採捕 の周年禁止、ヤマベ(サクラマスの稚魚)の一定期間(知床では5月1日から6月30日まで )の採捕禁止、サケ・マスが産卵した卵の採捕禁止の措置がとられている。また、「漁具又は 漁法の制限又は禁止」に。より水中に電気を流したり、やす、かぎ、もじ網を使用する漁法が 禁止されている。さらに、「禁止区域及び禁止期間」が設けられており、知床においては オンネベツ川が水産資源保護法の規定により指定する保護水面で、周年、水産動物の採捕が 禁止され、春刈古丹川は知事が資源保護水面に指定し、5月1日から12月31日まで ヤマベの採捕が禁止されている。斜里においては、「海区漁業調整委員会指示により、秋サケ 船釣ライセンス制が実施されており、釣り竿の制限や釣果の報告義務等が課せられている。 「海洋水産資源開発促進法」に基づく「資源管理協定」によって、沿岸及び沖合漁業者が 自主的に実施しているものとしては、資源保護の面から採捕できるスケトウダラ、マガレイ、 ソウハチの漁獲体長を制限している。この他にも○○○など、漁業者が自主的に資源管理の 取り組みを行なっている。なお。これらの法令による規制の実行を図るため、関係行政機関や 漁業協同組合などの団体でル−ルの遵守を指導しているほか、司法と行政機関による取締り とし、海上保安庁、警察、北海道 による漁業取締りを実施している。

(3)管理体制 ア.基本的な考え方
候補地は、上記の各種制度を所轄する環境省、林野庁、文化庁、北海道が、地元斜里町・ 羅臼町との密接な連携 のもとに一体となった管理を行なう。関係行政機関、団体との効果的 な協力、連携を図るため、候補地の管理に当たっては、上記関係行政機関及び地元関係団体間 の連絡調整の場として 「知床世界遺産候補地地域連絡会議」(以下「地域連絡会議」という) を設置する。また、候補地の適正な保全管理、調査研究に密接なかかわりを有する 「(財)知床財団」 、「(財)自然公園財団」、「知床博物館」、「知床自然センタ−」、 「知床鳥獣保護区管理センタ−」、 「羅臼ビジタ−センタ−」、「知床森林センタ−」の公的機関や専門家との密接な連携、情報交換を 行なう。

イ.候補地の管理に係わる関係行政機関の体制
(ア) 環境省自然環境局東北海道地区自然保護事務所 ウトロ自然保護官事務所及び羅臼自然保護官事務所に自然保護官を配置し、国立公園、 原生自然環境保全地域、鳥獣保護区の管理にあたっている。またシマフクロウの保護増殖 事業の業務を実施している。
(イ) 「林野庁北海道森林管理局北見分局・帯広分局」、「知床森林センタ−」、「網走南部森林管理局」 、(ウトロ森林事務所、峰浜森林事務所)、「根釧東部森林管理所」(羅臼森林事務所) 。 森林官を配置し、森林の巡視を行なうとともに、登山等により国有林に入林する利用者から 入山届を受理し、入山状況を管理している。
(ウ)(北海道関係、水産関係を適宜追加)
(エ) 斜里町
(オ)羅臼町

5.管理の方策 (1)基本方針
ア.原始性の保持
知床は、半島に通ずる車道や地域内の歩道が限られ、到達ル−トがげんていされていることから 、我が国の国立公園の中でもまとまりを持って原始性が保たれている地域であり、候補地の管理 にあたっては、この原始性を次の世代に継承できるよう細心の注意を払う。
イ.陸域・海域の統合的管理
知床の遺産としての価値は、流氷の育む湯他かな海洋生態系と、原始性の高い陸域生態系の 相互関係に特徴があり、また、このような特徴に依存して世界的な絶滅危惧種である オオワシ、オジロワシ、シマフクロウ、の重要な生息地になっている点にある。したがって、 陸域と海域の生態系を指標するような生物の生息状況、植物群落や植物相の状況 、水質や流況など基盤となる環境の状況などを把握しつつ、知床に取り巻く陸域と海域の 連続性、健全性をモニタリングし、自然環境に影響を及ぼすような変化の兆候が認められた場合 には、科学的な調査を実施して原因の分析と環境回復に向けた対策を検討し、所要の対策を講じる。
ウ.核の地域、暖衝地域
候補地のうち、自然環境が良好に保たれ、将来にわたり厳正な保護管理を図る必要のあるまとまり をもった地域を核心地域とし、その周辺の核心地域の自然保護環境を保護するための暖衝帯を 暖衝地域とする。 核心地域では原則として人手を加えずに 自然の推移に委ねることを基本とし、 自然環境の保全上支障を及ばす恐れのある行為は、学術研究など特別な事由がある場合を除き 、各種保護制度に基づき厳正にに規制する。既存の工作物を改築、増築、する場合であっても 自然環境に及ぼす影響を最小限にとどめるよう慎重に取り扱う。 陸域の暖衝地域では、必要に応じ 一定の行為を規制し、現状の保存を図る
。特に核心地域の自然環境に影響を及ぼす行為については 、厳正に規制する。 海域の暖衝地域 は国立公園普通地域になっていることから、海面の埋めたて などの行為については、陸域及び海域の自然環境に影響をおよぼすことのないよう適正に対処する。


エ. 一次産業との両立
候補地(陸域)の●%を占める国有林は、森林生態系保護地域に指定されており、木材生産を 目的とする森林施業は行なわれていない。また極一部に民有林が含まれるものの、同様の森林 産業は行なわれていない。流氷がもたらすプランクトンにより、知床周辺海域の生物資源は 、他の海域に比べ非常に豊かである。この恩恵を受けるサケ・マス漁業、コンブ漁その他の 水産業にあっては、知床に生息する野生動物の保護と住民の生産活動との共存に配慮しながら 、水産資源の持続可能な利用を図る。

オ.自然の適正な利用
原生的な自然環境と豊富な野生生物によって形成される多様な生態系の将来にわたる保全を 前提として、観光、自然探勝等の利用は、自然環境に支障を及ぼすことのないよう、 一定の制限のもとに適正に行なうことを基本とする。
(2)生態系及び自然景観のの保全
ア.基本的考え方
知床が有する原始性、豊かな生態系や優れた自然景観を将来にわたって保全するため、 核心地域にあっつては、基本的には 自然の遷移に委ねる管理を原則とし、既に人的行為の 影響下にある地域ついては、生物多様性を高める方向での管理を行なう。また暖衝地域に あっては、極力、核心地域の生態系、自然景観への悪影響が及ぶことのないような 自然環境の管理を行なう。
イ.植生及び野生動物の保護管理
(ア)植生
遺産候補地の全てが国立公園特別地域又は森林生態系保護地域に指定されており、これらの 制度に基づき、植生の適正な管理を行なう。 エゾシカの採食圧による自然植生への影響について は実態把握を行い、所要の対策を検討する。特に知床岬地区の高茎草本群落、風衝草原の 保護対策を早急に検討し、可能な範囲でエゾシカ侵入防止柵の設置などの対策を講じる。 山岳稜線部や知床岬等での 人の踏みつけによる植生の損傷状況を引き続き把握し、立ち入りの 制限、適正な誘導、植生の修復などを行なう。暖衝地域に位置する「しれとこ100平方メ−トル 運動地」については、森林の回復に関する事業を推進する。
(イ).野生動物
候補地の●%が、森林生態系保護地域又は 国指定鳥獣保護区となっており、これらの制度に 基づき、シマフクロウなどの希少鳥類の生息地の保護や狩猟等の禁止など、野生動物の 適正な管理を行なう。 国指定鳥獣保護区マスタ−プラン(2003年3月)に基づき、 以下の方針により野生動物の保護管理を推進する。
a.生態系の自然状態における 遷移と循環を維持・保全することを基本として野生動物の 生息地の保護を図るとともに、人為の影響により著しく増加あるいは減少した野生動物に ついては、科学的にその生息状況を把握し、必要な対策を検討する。
b.野生動物の「生息状況」、「個体群の動向」、「生息環境」、「生態」 などに関する調査研究を進め、 必要に応じて個別の野生動物ごとの保護管理計画を検討する。計画の運用にあたっては 、現状に関するモニタリングを実施し、その結果をフイ−ドバックして所要の見直しを 行なう。
d. ルシャの特別保護指定区域においては、植物の採取・損傷、たき火、車馬の乗り入れ 、撮影その他、野生動物の生息に影響を及ぼす行為を規制する。
e.主な野生動物毎の管理方針は、以下の通りとする。
(a)エゾシカ
積雪期における航空機を用いた分布調査、死亡収容固体からの年齢査定調査、斜里町・羅臼町 が主体となった 「スポットライトセンサス」などにより生息動向を把握するとともに、エゾシカの 採食による植生への被害状況をモニタリングし、関係行政機関、団体、専門家等と協力して 知床におけるエゾシカの管理計画を作成する。
(b)ヒグマ
電波発信機を用いた行動調査や生息環境の利用状況調査等の結果を踏まえ、個体群の動態を 把握し、適正な保護管理を行なう。特に 利用者や 地域住民とヒグマの軋轢を回避するために 、誘引物の除去、追い払い等の対応、利用者の行動制限を含む利用システムの構築、適切な 施設整備及び利用者等への普及啓発、情報提供に努める。
(c)シマフクロウ
種の保存法に基づく国内希少野生動植物種及び文化保護法に基づく天然記念物に指定され 、その捕獲や殺傷は禁止されている。地元に生息するシマフクロウは、 人口供餌に依存する 固体がほとんど無く、自然化で繁殖している。縄張りからあふれた固体が周辺地域へ移動する ことによる「供給源」的役割を有していると考えられる。。このため、つがいの生息が確認 されている河川の周辺においては、極力、自然環境を現状のまま維持するとともに、必要に 応じ生息環境の改善を行なう。 また 撮影のためのシマフクロウへの接近が生息を攪乱しないよう 、入りこみ者への指導を行なう。さらに、繁殖期の生息状況調査、巣立ちビナへの標識装置 等を引き続き続行する。
(d)オオワシ、オジロワシ
オオワシ、オジロワシともに種の保存法に基づく国内希少野生動植物種及び文化財保護法に 基づく天然記念物に指定され、その捕獲や殺傷は禁止されている。知床の海岸斜面などには 、ワシ類の利用できる森林が連続しており、越冬季のオオワシ、オジロワシが常時利用する 環境になっている。また一部はオジロワシの繁殖地となっている。このためこれら海岸斜面の 森林を保存するとともに、オジロワシの繁殖期には人がむやみに営巣周辺に近づかないよう 利用者への指導、普及啓発を図る。
ウ.自然景観保全
山岳、湖沼、滝、海岸段丘崖に代表される知床の優れた自然景観を保全するため、原生自然環境 保全地域、国立公園、森林生態系保護地域の制度に基づき、工作物の新改増築、木竹bの伐採 、土石の採取などの行為を適切に制限する。また、海岸部に漂着したゴミなどについては、 関係行政機関の連携のもと、 地域住民や関係団体の協力を得て、その除去に努める。
エ.河川環境保全

河川に生息する魚、特にサケ科の遡河性魚類は、ヒグマ、シマフクロウ、オオワシ、オジロワシ など植物連鎖の頂点に位置する大型哺乳類、猛禽類の餌になっており、海洋生態系と陸域生態系を 有機的に繋ぐ重要な役割を有している。
このため、河川環境に影響を及ぼす各種工作物の設置に際しては、河川に生息する生物に悪影響 を及ぼさないよう、配置や公法上の検討を行なうとともに、汚濁防止措置を講じる等十分な配慮 を行なう。
また、これまでも地元の漁業協同組合が自主的に人工孵化放流事業のために採卵する河川の 集約化を行なっており、引き続き採卵河川や採卵時期について、漁業関係者と十分調整しながら 、自然産卵のための魚類のさ遡上が可能となる河川を増やすよう努める。さらに、サケ・マス 定置網の撤去を12月上旬に、ウライの撤去●月には行い(要確認)、それ以降、サケ、マスは 自然遡上に委ねており、このような措置を今後とも継続する。
オ.外来種への対応

外来種の定着実態の把握を進めるとともに、侵入経路を確定し、有効な予防対策を検討する 。知床岬地区に侵入、定着している外来植物のうち、生育区域の拡大が著しいアメリカオニアザミ ついては、生態系からの除去を図る。また、オオバコなど靴などへの種子付着が原因と見られる 外来植物が確認されていることから、候補地への外来種の侵入を防止するためのル−ルづくりを 進める。知床半島の基部では、シマフクロウへ悪影響をもたらすアライグマの侵入が懸念されて いるところであり、足跡や糞等の痕跡が見つかった地域では、捕獲に努める。マタペットとして 飼育されているアライグマを放棄しないよう、関係者への普及啓発を行なう。北海道内水面漁業 調整規則に基づき、ブラックバス及びブル−ギルの移植はきんしされており、その徹底を図る。

(3)海域の保存
ア.基本的考え方
知床の周辺海域は、流氷がもたらすプランクトンを基盤とした生物生産量が豊かであり、これに 依存する形で豊富な魚類や海生哺乳類、鳥類が生息している。また産卵のために遡上するサケ科 に代表される魚類には、ヒグマや猛禽類、海鳥などの餌として重要な役割を有しており 、陸域の生態系にも深くかかわっている。
従って、これら海域と陸域の生態系の繋がりを十分踏まえた上で、海域に生息する野生動物の 管理や水産資源の持続可能な利用を行なっていく。

イ.水産資源の管理
知床周辺海域における漁業は、海域の生物生産量の豊かさに支えられた形で、○○○等のより 、これまで持続的な漁獲量を維持しており、引き続き、「北海道海面漁業調整規則」、「 北海道内水面漁業調整規則」などに基づき、適正な資源管理を行なっていく。
特に人工孵化放流事業については、地元漁業協同組合により自主的に採卵する河川の集約化を 行なっており、引き続き採卵河川や採卵時期について、漁業関係者と十分調整しながら、 自然採卵のための魚類の遡上が可能となる河川を増やすように努める。

ウ.海生哺乳類・海鳥の保護
サケ・マス定置網については、設置期間を●から12月までの間に限定し、それ以外の時期には 撤去することにより、鰭脚類等の海生哺乳類の偶発的な捕獲を避けており、引き続きこのような 措置を継続する。定置網の設置期間であっても、海生哺乳類が偶発的に網に入った場合には、 可能な限り開放、することにしておりこのような措置が一層適切に講じられるよう関係者の理解と 協力を求めていく。
トドについては、例年、北海道沿岸に来遊し、日本海海岸や知床沿岸で10月末から翌年5月にかけて 採餌行動をとっており、特に日本海沿岸海域で大きな漁業被害をもたらしている。平成6年(1994) 以降実施してきた漁業法に基づく「北海道連合海区漁業調整委員会指示」による採捕制限や トドに破られにくい網の開発・普及により、北海道全域においてトドと漁業との共生を図っていく。 知床周辺海域におけるトドについては、効果的な被害防止対策の実施と併せ、当該海域における 固体群が維持されるよう、具体的な共存方策を検討していく。
魚網による海鳥の偶発的な捕獲については、現在のところ実態が十分把握されていないとことから、 情報の収集に努め、必要に応じ対策を検討する。

エ.海洋油汚染対策
候補地及びその周辺海域において、まんいち、油汚染が発生した場合には、その初期の段階から 迅速かつ効果的な措置を講じていくものとする。各機関においては、油汚染発生時における 環境影響調査、野生生物保護などの対策措置を講じる上で参考となる情報の収集、整理を進め その共有化に努める。
また、汚染発生時の対応体制の整備に努めるとともに、機関相互の連携・協力体制の 一層の確保に努める。

(4)自然の適正な利用
ア.基本的考え方

観光、自然探勝などの利用については、世界遺産としての価値を将来にわたって損なうことの ないように、候補地における利用形態の特性に応じて、 FONT SIZE="2"> 一定の制限のもとに適正に行なわれる ようにするものとして、そのための ル−ル作りを進める。また、過度な利用に集中に伴う問題が 生じないように、利用情報や利用プログラムの提供を通じて、利用者の適正な誘導を図る。 利用者に対しては、事故防止のための注意喚起等を行なうことに加え、自らからの身は自ら 守るという 自己責任意識の普及啓発に努める。
関係機関が連携し、利用状況や利用に伴う自然環境への影響について継続的なモニタリングを 行い、その結果に応じて影響防止のための適切な対策を講じる。

イ.主要利用形態ごとの対応方針
(ア)観光周遊
候補地の利用形態として最も一般的な形態は、自動車や観光船による観光周遊である。 候補地内で自動車による観光周遊に供されている地区にはカムイワッカ、知床五胡、 知床峠、羅臼温泉などがあるが、車道が比較的少ないことから周遊地は限定されている。 周遊しながら、それぞれの利用拠点で風景の鑑賞や徒歩による自然の探勝、観察が おこなわれている。
候補地の原始的な自然環境の保全の重要性に鑑み、自動車利用の増大により支障を招くような 新たな車道の設置は、原則として行なわない。現在、自動車による周遊に供されている主要な 展望地や利用拠点については、利用者が快適に利用でき、候補地の自然景観などを鑑賞できるよう 、過剰利用の抑制や、自然環境への影響防止に十分配慮しつつ、適切な整備を図る。
一方、自動車利用の増大から自然環境への悪影響が懸念され、もしくは利用環境が悪化している 状況が見られる場合には、代替交通機関によるマイカ−規制などの影響緩和措置を実施し 自動車利用の適正化を推進する。また自然環境の保全と質の高い利用を推進するため、 シャトルバスの積極的な導入についても検討を行なう。なお、知床五湖等利用者が集中する 拠点や到達道路が限られているカムイワッカ地区については、自然保護のために現在行なわ れている夏季の自動車利用適正化対策の充実を図る。
また、斜里側と羅臼側を結ぶ車道である知床横断道路については、ハイマツを含む高山帯を 通過していることから、道路利用に伴う自然環境への影響を最小限にとどめるため、知床峠 を除き通過利用を原則とし、道路上での駐車規制を引き続き実施する。
自動車や観光船の利用者が野生動物に餌を与えたり、 ゴミを捨てることが、野生動物の生態に 悪影響を及ぼすおそれもある。こうした利用に伴う野生動物への影響を防ぐためのル−ル作り を行い、注意喚起、普及啓発を徹底する。

(イ)登山、トレッキング
候補地内の山岳部を中心として、登山やトレッキングの利用が行なわれている。これらの利用は、 脆弱な高山帯の植生や貴重な野生動物の生息・繁殖などを含む原生的な自然環境の地域を対象として 行なわれることから、こうした自然環境にたいして、悪影響が生じないようにする必要がある。 また、ヒグマが高密度に生息することから、ヒグマと遭遇する場合もあり、可能な限りヒグマとの 軋轢を回避することも必要である。このため、自然環境保全上の配慮事項やヒグマ遭遇時の対応法 、ゴミ・食料の管理方法などについて、指導・啓発を行なう。加えて、利用に伴う自然環境への影響や ヒグマの行動形態などを把握しつつ、必要に応じて、利用の制限(歩道のの一時閉鎖、利用区域 ・期間の限定等)などの適切な処置をとる。また、植生の保護や登山者の危険防止に配慮した 歩道などの適切な整備と維持管理を行なう。
登山・トレッキングに伴うキャンプについては、テント設営や焚き火による自然植生の衰退 、植物の損傷が生ずること懸念されることから、 指定され地域以外でのキャンプは行なわないよう 利用者への指導を徹底する。また、知床山系の登山道のキャンプ指定地にはヒグマ対策用の フ−ドロッ−カ−が設置されていることから、利用者に対し、キャンプの際は安全策として フ−ドロッカ−を利用するよう指導する。その他の地域におけるキャンプについてはフ−ド コンテナを持参するよう普及啓発を行なう。

(ウ)海域のレクレ−ション利用
観光目的で 動力船(プレジャ−ボ−ト等)により、知床半島の陸域に上陸することは 、自然環境に悪影響を及ぼすことが懸念されることから、極力抑制する。
また、候補地の海岸部及び海域は、ケイマフリやオオセグロカモメ、ウミウ等の海鳥の繁殖地 ・生息地となっているため、観光やレジャ−目的の船舶の航行がこれら海鳥の生育に影響を与える ことも懸念される。このため、海域の利用が海鳥などの自然環境に支障を与えないようなル−ル作り を行なうとともに、普及啓発を行なう。
シ−カヤックで半島を周回したり、興味地点まで往復するなどの利用も認められる。シ−カヤック での利用では、野営や風待ちなどのために陸域への上陸が必要となる場合がある。 このため海岸部の植生や野生動物に悪影響を及ぼさないよう、一定のル−ルのもとに適正に 行なわれるようにする。
シロザケやカラフトマスが遡上する7月から9月にかけては、有漁船などを利用して、河口付近で 釣りが行なわれている。サケ・マス等の捕獲については、北海道海面漁業調整規則、同内水面漁業 調整規則及びかいく漁業調整委員会指示等に基づき、適切に利用者を指導する。 また、遊漁関係者などと連携協力し、釣りを行なう場所を指定したり、ゴミの持ち帰りや釣り上げた 魚の処置を適切に行なうよう指導するなど、自然環境への悪影響を防止する。

(エ)その他の利用
候補地ではエゾシカやヒグマななどの野生動物の姿を見ることが日常的であるが、これら 野生動物の写真撮影や観察については、繁殖活動に悪影響を与えることがあってはならない。 また高山帯や湿地等の脆弱な植生を有する地域においては写真撮影等の目的とした歩道外 への踏み出しによる植生衰退を防止する必要がある。このため、 利用者への指導や普及啓発 活動によりこれらの行為の抑制に努める。ルシャ・テッパンベツ川流域では、特にヒグマが多く 生息し、その生態を撮影しようとするカメラマンの入り込みも見られることから、鳥獣保護区 特別保護指定区域の規制をはじめ、必要な措置を講じて、写真撮影等による悪影響が生じないよう に適正に指導、管理を行なう。
冬季の クロスカントリ−スキ−等による利用は、オジロワシ等希少鳥類の繁殖活動への悪影響 や雪崩の危険などが懸念されることから、知床自然センタ−等において事前の指導を行なう。 遠音別岳原生自然環境保全地域及び知床国立公園への スノ−モ−ビルの乗り入れは規制されて いることから、違法な乗り入れが行なわれないよう巡視・取締を行なう。

ウ.自然解説ガイドの育成
候補地における最も一般的な利用は、自動車や観光船による観光周遊であるが、知床の持つ 価値を保護し、つぎの世代にへ引き継ぐためには、知床の自然環境及びその保護の重要性に ついてより一層理解を深められるよう、自然の中を歩くツア−や野生生物の観察といった 質の高い体験型の利用へ、誘導・転換していくことが望ましい。
このような利用を推進していくため、関係機関や団体などが協力して、自然解説等を行なう ガイドの人材育成及び 利用プログラム の構築と実践を図っていく。

エ.主要施設の運営方針
(ア)知床自然センタ−
知床の原生的な自然環境の保全及びその再生と賢明かつ持続的な利用の推進を目的として 、自然保護思想の普及啓発や利用案内、自然観察、安全指導その他の情報発信の拠点として 位置づけ、運営を行なっていく。

(イ)知床鳥獣保護区管理センタ−
野生動植物の生息・生育状況、生態及び鳥獣保護区や野生動物の保護管理に係わる調査研究 を推進する。

(ウ)羅臼ビジタ−センタ−
羅臼地区における情報発信の中心的な施設として、関係団体・機関、ボランティア等と 連携し、施設の管理運営及び国立公園の適正利用を推進する。自然保護教育活動の拠点として 、自然環境などの調査・資料の収集・保管・提供を行い、施設の整備拡充を図る。また、当該 施設を活動拠点とした 自然解説ボランィテア活動の拡充を図るとともに、 パ−クボランティア の指導育成を推進する。正確でリアルタイムな現地情報の収集に努め、利用者に対する 情報提供の強化を図る。

(エ)知床森林センタ−
知床の生態系や貴重な森林の保護の必要性の普及啓発、森林の巡視、施設、標識類の管理・整備 、森林や動植物に関する調査などにより、森林の公益的機能の維持や普及啓発を行なう。

オ.情報提供・普及啓発
候補地の適正な利用を導くための標識・案内板を所要の箇所に整備する。
主要利用施設において利用者への自然情報などの提供、ル−ルやマナ−などの普及啓発に関する 展示、レクチャ−などを行なう。
候補地のうち特に自然環境への十分な配慮が必要な地域は入る利用者に対しては、事前にヒグマ 等野生動物への対処、危険の回避、マナ−の徹底などの関する指導を行なう。このほか、 ホ−ムペ−ジによる情報の提供や、候補地内外における情報提供施設の充実に努める。

<カ>オ.情報提供・普及啓発
環境自然保護官、国指定知床鳥獣保護区管理員、林野庁森林管理署森理官のほか (財)知床自然財団、(財)自然公園財団職員が適宜、候補地の巡視を行なっている。 夏季の利用繁忙期に実施している関係行政機関による知床岬の合同巡視を引き続き実施 するとともに、 巡視体制の一層の充実に努める。

(5)調査研究、モニタリング
ア.基本的考え方
陸域と海域との生態系のつながりや健全性などについて、科学的な調査研究や長期にわたる モニタリング等を実施し、適正な管理に必要なデ−タ−の収集に努める。そのため、関係機関 、団体、研究者等との連携、協力体制を整備する。併せて調査研究やモニタリングで得られた 情報の共有化、有効活性のための仕組みを設ける。
自然環境に関するデ−タ−を継続して収集するため、全国に約1,000箇所設けられる モニタリング調査を実施する。

イ.植生及び野生動物
(ア)植生
これまで自然環境保全基礎調査や局地的な植生調査により、植生の把握が行なわれてきた。 引き続き衛星画像や航空写真の解析により、マクロ的な植生の変化を把握する。
調査区における植生調査の実施や定点からの継続的な写真撮影等を通じて、重要箇所の 植生変化を把握する。知床半島の風衝草原植生のうち、エゾシカによる採食、踏み荒らしを 避けるため設置した防護柵により囲われた区域では、植生の回復状況を継続的にモニタリング する。

(イ)エゾシカ
これまでの積雪期における航空機を用いた分布調査、死亡収容固体からの年齢査定調査 、夜間のスポットライトセンサスなどを実施し、生息動向の把握に努めている。
このような調査を引き続き実施するとともに、生息密度と森林生態系への影響との関係を 明らかにする調査を実施し、エゾシカの採食による樹木や植生への影響に関するモニタリング を行い、効果的な対策を実施ずる。

(ウ)知床半島における現状の生息密度を維持していくため、ヒグマの生息分布、行動形態 などに関する基礎的な調査研究を引き続き行なう。
また、利用者とのそうぐうが懸念される地域にあっては、生息固体への発信器装置や巡視 などにより行動形態の詳細を把握し、事故などの発生を未然に防止する。

(エ)シマフクロウ
北海道において最も高密度に生息し、周辺地への「供給源」的役割を果たしている知床半島の 個体群を維持していくため、保護増殖事業の一環として、生息分布調査、繁殖期の生息状況 調査、巣立ちビナへの標識装置などを引き続き行なう。

(オ)オオワシ、オジロワシ
1980年以降、知床を含む北海道東部一円においてオオワシ、オジロワシの冬季カウント調査が 行なわれており、引き続き越冬状況の経年的た調査を実施する。また、オジロワシの繁殖状況調査 、オオワシへの発信機装着による渡りル−ト調査などを通じ、生息状況の把握に努める。

ウ.景観
幾つかの定点を特定し、経年的な景観撮影を行なうことにより、自然環境の変化をモニタリング する。

エ.外来種
アメリカオニアザミ、オオバコをはじめとする外来植物の分布の拡大は、在来植物への深刻な 悪影響をもたらす。したがって外来植物の分布状況を把握した上で、生態系からの除去を含む 効果的な対策が講じられるよう必要な調査を行なう。
アライグマについては、今のところ候補地では目撃報告がないものの、いったん定着すると 生態系への悪影響が危惧されることから、各種調査や巡視などの機会を通じ、侵入の早期発見に 努める。またその他の外来種についても、生態系のモニタリングなどをつうじ、早期発見に努める。

オ.海洋生態系など
水質資源の漁獲量を継続的に把握することにより、海域における生物生産性の変動状況を 推定する。トド、アザラシ、などの再生哺乳類及び海鳥類の分布や行動等の生息状況に ついては、十分な蓄積がなされていないところ、関係機関が連携・協力して、デ−タ−の収集 、整理、蓄積に努める。また、海洋生物研究者と連携し、海洋生物、気候、流氷等に関する デ−タ−を収集、蓄積する。また、調査研究成果に関する情報交換を行なうなどして、 知床半島周辺海域における海洋生態系の状況をモニタリングする。

カ.利用状況
自然環境への過剰な負荷がかからないよう、主な施設、地域における利用、いり込みの 状況と伴う自然環境への影響を把握する。

6.候補周辺への管理(ペンディング)
ア.自然環境の概要
イ.管理の方策
ウ.その他

7.計画の実施その他の事項
知床の適正な保全.管理が遂行されるよう、本管理計画記載の各事項を円滑に実施するため 、関係機関、団体は緊密な連携・協力の下、最大限努力する。候補地の自然環境の管理に 関する細部にわたる取り扱いについては、地元関係者などの意見を聞き、知床世界自然遺産 候補地地域連絡会議において合意形成を図りながら、モニタリング結果などを踏まえ検討を 行い、候補地の管理を推進する。本管理計画は、自然条件や社会条件の変化などを踏まえ 必要に応じ見直しを行なう。その際、地元関係者など意見を聴く。

8.おわりに
知床は、アイヌの人々が畏敬の念を込めて「シリエトク(大地の果てるところ)」と呼んだように 、険しい地形や厳しい気象条件のもとに、日本では数少ない原始的な自然環境が残されている 地域である。そこにはアイヌの人々が「カムイ(神)」と称したヒグマや、シマフクロウが きわめて高密度に生息する。そしてそれらの動物などを頂点として、実に多様な生物が海から 川、山にわたり有機的に連関しあって、豊かな生態系が成立している。
半島地域に暮らす人たちは、こうした自然を損なうことなく、むしろ順応する形で自然がもたらす 様々な恵みを持続的に利用しながら、地域特有の生活や産業を営み、文化を育んできた。 昭和49年には、国立公園指定10周年を契機とし、斜里・羅臼町が町民とともに 知床憲章を制定した。その中で、知床の原始的自然を人類共有の財産と位置づけ、厳正な保護と 秩序ある利用のもとに、永く子孫に伝えていくことを宣言した。また、開拓跡地を乱開発から 守るため買い上げ、さらに原始の森へと再生する息長い活動も開始され、地域主導のもと国民の 幅広い協力を得て展開されている。知床の貴重な自然が今日まで保たれてきた背景には、 こうした地域の人たちの自然に対する高い意識とこれまでの地道な取り組みがあることを 忘れてはならない。管理を担う関係行政機関の連携はもちろんのこと、 地域の住民や民間団体 などの積極的な参加・協力を得て、世界遺産候補地の自然と、そしてその自然と共生する地域の 双方がより輝きを増していくように、様々な取り組みを進めるものとする。