草楽園活用法
「村田先生のお思いで」
私が羅臼に来たころ村田吾一先生は矍鑠としており
初めて訪れた見慣れぬよそ者を飄々と庭園に入れてくれた。
その自然体が心地よく高山植物を仲立ちにして以後
ご贔屓にさせていただくようになりました。先生はお酒が大好きで
後年体調を崩され医者から酒を禁じられることになっても
奥さんの目を盗んでは隠れ酒をやっていました。
初夏になり庭園にある太い山椒の木が新芽を吹きだすと、先生は
一掴みの新芽のついた枝木をもって私の店に現れました。
飲食店を営む私には新鮮な山椒の芽はありがたく
毎年この時季になると先生の来る日を心待ちにしていたものです。
そして先生は必ず「酒を一杯くれや」といって一杯のコップ酒を
美味そうに飲み干してお帰りになるのでした。
どんなにすすめても呑むのは一杯だけです。
恐妻家の先生はそれ以上呑むと息が酒臭くなり奥さんにばれるのが怖かったんです。
木の芽で一杯貸し借り無しの初夏の昼
(お前さん俺に木の芽をもらって、どう返礼したもんかと考えているだろう
おらあそんな気はないが、先輩に物貰ってただというわけにもいくめえ、
お前さんを煩わしちゃなんだから
俺の好きな酒を一杯貰おう、言っておくが女房にゃ内緒だよ)
今でも夏が近づくと、先生の気配を感ずるのです。
|
|