らうす千一話








手負いグマと死闘


北海道新聞朝刊掲載(99.12.24) 聞き手・釧路報道部 溝口 徹

クマに遭う二日前、 釣り餌を探しに霧里川に行ったとき、 盛り土され、何かを埋めた跡を見つけた。 駆除で人が埋めたシカをクマが掘り起こし、 貯食のため運んで埋めたに違いなかった。 民家から数百メ−トルしか離れていなかった。 三十一日は夜明けとともに山に入った。 埋めた跡の近くにシカの残がいが二つあった。 山側の低木の茂みをスコ−プでのぞいたら、クマがいた。 こちらを見ているようだった。距離は140メ−トル。 沢を挟んだ高台から、胸を狙った。弾は腹に当ったらしい。 クマは「ギャ−」と声を上げ、約40メ−トル転がり落ちた。 間髪入れずに二発目を射った。今度は前足の付け根を横に貫通した。 もう一発と銃を構えたが、動く気配がない。 5分待ち、銃で警戒しながら近ついた。クマはあお向けに倒れていた。 距離は20メ−トル。頭が見えず、とどめはさせない。 さらに10分。やはり動かないので山を下りようと背を向けた時、 気配を感じた。振り返ると、クマが音を潜め、ものすごい速さではうように、 こちらに向っていた。死んだふりして、こちらが油断するのを待っていたようだ。 足元をすくわれ、弾みで銃を落とした。クマと一緒に7メ−トル下の谷に転がり、 上にのしかかられた。この時ろっ骨を折ったようだが、痛みは感じなかった。 クマのかむ力を弱めるため、とっさに鼻をつかみ、口にはもう一つの腕をかませた。 クマは腕をがりがりやっていたが、力が入らない様子だった。疲れたら腕を替える。 そんな動作を繰り返した。クマの腕は弾で負傷し、つめでやられる心配はなかった。 あごもかまれたが、こちらは鼻をかんでやった。絶対おまえには負けない、という 気持ちだった。そんなせめぎ合いが続いた後、下敷きだった足が自由になった。 下腹部を思いっきりけると、クマがずり落ちた。急いで銃を拾いに行った。 至近距離なのに、腕に力が入らない。ひざで銃を支え、頭を狙った。 一発目は外れたが、二発目が頭を直撃した。クマの返り血と自分の血で、 全身血まみれ。息苦しくて歩くのも大変だったが、なんとか車に戻り、 助けを求めた。クマを最初に射ってから、1時間20分がたっていた。
佐藤さんはろっ骨、右手首など骨折、手術後1ヶ月半、入院した。 傷は顔だけで50ヶ所。全身は数え切れないという。 「ここ数年、音別周辺のクマが増えた」と話す佐藤さんは「駆除や狩猟でシカが減り、 シカの残がいが少なくなると、クマは家畜などを求めて人里に近つく、そのとき、 人はクマとどう共生するのか。真剣に考える時期にきた」と警鐘を鳴らした。
*クマ目撃情報前年比42%増し 道警釧本調べ 道警釧本によると、釧路、根室、十勝管内のヒグマ目撃情報は、 1997年に39件だったが、98年には71件、 今年は20日現在、前年を42%上回る101件ある。 人身被害は佐藤さんをふくめ、過去3年間で3件発生した。 昨年11月23日、新得町屈足の国有林でシカ猟をしていた 滝川市の男性自衛官(51)がシカ猟で入山中、 クマを発見、ライフル弾2発射ったが逆襲され、軽傷。 同じ日に白糠町泊別の山中にシカ猟で来た釧路市の 男性自営業者(44)がクマと遭遇、襲われて沢に転落し、 上腕部や肩などを折る重傷を負った。

以上ですが、佐藤清覚さん(64)は狩猟暦40年のベテランです。クマには慎重に 対処しましたが一瞬の油断をつかれました。手負いクマの恐ろしさです。 もどる 











     

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